【編集長が最近思うこと】バンドが分裂する前に・・・




こんにちは!

Wind Band Press編集長の梅本です。

この編集長コラムでは、最近気になることや、経験上何か役立ちそうなことなんかを、ちょこちょこと書いていきます。

 


今日は「バンドが分裂する前に・・・」というタイトルで。

今は吹奏楽コンクールの練習をしているバンドが多い時期ですね。

バンドによって違うのでひとまとめには出来ませんが、こういう時期はチームの雰囲気が悪くなってしまったり、心がバラバラになって、バンドが分裂してしまうことがあります。

みなさん幸せに生きたいと思って生きていると思うので(不幸になりたい人っているのかな?)、できれば吹奏楽のことで喧嘩したりモヤモヤしたりしたくないですよね。楽しく、または厳しくても前向きでいたいんじゃないかなと思います。

経験則ですが、だいたいは「目標」「やりたいこと」のズレ、価値観の違い、自責より他責、そういったことをそのまま放置しておくことで状況が悪化するように思います。

最近読んだ本の中に「これはバンド運営にも活かせるんじゃないかな」という話が多くありましたので、少し考え方をピックアップしてみますね。

まず分裂が起きる背景には何かしらの「対立」が起きている、という前提を理解しましょう。

チーム内の対立には2種類あります。

「リレーションシップ・コンフリクト(人間関係の対立)」と、「タスク・コンフリクト(異なる意見がぶつかり合う理性的な対立)」です。

「リレーションシップ・コンフリクト(人間関係の対立)」というのは、「まじでうぜえ」と悪口をいったり、「このやろう」と思ったり、という敵意や憎悪に満ちた感情的な対立です。

「タスク・コンフリクト(異なる意見がぶつかり合う理性的な対立)」というのは、何をどうするか、例えば練習メニューの時間割を変えるべきかどうか、基礎合奏に割く時間や内容を変えるべきかどうか、または音楽の解釈であったり、そのようなことを討論する場合に生じます。

生産性の高いチームでは、「リレーションシップ・コンフリクト(人間関係の対立)」が低く、「タスク・コンフリクト(異なる意見がぶつかり合う理性的な対立)」が高い。

生産性の低いチームでは、その逆、という実験結果が出ています。

楽しくバンドをやるためには対立を避けなければいけない、と思うかもしれませんが、実験結果を見る限り、「タスク・コンフリクト」であれば恐れることはありません。

「リレーションシップ・コンフリクト」では、自分の意見を守り、他人の意見を責め立て、味方以外の意見を却下してしまいます。

他方、「タスク・コンフリクト」では、人は謙虚さを持ち、疑問があれば表明し、新しいアイディアを求めるようになります。建設的な話し合い、というやつですね。

東洋人は協調性が高い傾向にあるらしく、それによって対立を避ける傾向にあるそうです。

ただ、裏で悪口を言ったり、相手を信用していなかったり、といった表面化しない「リレーションシップ・コンフリクト(人間関係の対立)」が起きやすいのがこの時期だとも言えると思います。

協調性とは社会との調和を重んじることであって、人の考えに同調することではありません。

ですから、相手に対するリスペクト(これは「協調性」の良い面でしょう)があれば、対立は「リレーションシップ・コンフリクト」ではなく「タスク・コンフリクト」になるはずです。感情的な討論になることなく、謙虚さを持ちながら、「より良いアイディアはないか」ということを話し合うことが出来るのではないでしょうか。

「くちゲンカ」を「討論」に置き換えることで、対立の質は改善されます。何か問題が(対立が)起きたときに、「ちょっと話し合おうか?」と提案をしてみましょう。

ただ、熱い討論の中で「カッ」となってしまうと、「タスク・コンフリクト」は「リレーションシップ・コンフリクト」に姿を変えますので注意が必要です。反射的に「あっ、こいつ嫌い」となってしまうことも多々あるというわけです。

話し合い(討論)を行う際に、いくつか大事なことがありますが、まずは謙虚であること、自分を過信しないことです。説教をしたり、非難したり、言い訳をしないこと。自分のアイディアは直感にすぎないと認識し、それが正しいどうか実験をしてデータを集めることです。

そして、自分と異なる意見を歓迎しましょう。それがより良いバンド運営につながるアイディアを生む原動力となり得るからです。もし自分が間違えていたと悟ったら、それを喜んで受け入れます。間違いを一つ減らせばその分向上することが出来るからです。

そして建設的な話し合いを行うためには、お互いの話を傾聴することです。聴いて、「どうしてそう思うようになったの?」ではなく「どうしたらそのアイディアを実現出来ると思う?」というように問いかけをします。「どうして」「なんで」と聴かれると、相手は心を閉ざしてしまいます。自分の意見を正当化するためのあれやこれやで話し合いの場が埋め尽くされてしまうでしょう(自分の意見に「なんで?」と聴かれた場合を想像してみて下さい)。「どうしたら?」と尋ねられたら、説明をしなければいけませんから、より具体的なアイディアやストーリーが語られます。

常に「共通点」(例えば「楽しくやりたい」とか)を元に、相手の話を聞き、「どうしたらそれが実現できるだろうか?」とさらに相手の話を聞きながら、自分の意見もアップデートして「私はこう思うけど、この方法はどうだろうか」と述べてみてはどうでしょうか。

もし話し合いが感情的になってしまったら、「話し合いのための話し合い」を間にはさみましょう。自分の感情を述べて、相手も同じ感情になっているかどうか確認をします。お互いの気持ちを理解することで、軌道修正出来る場合があります。

とまあつらつらと書いてきましたが、僕が最近得た知見は上記のようなことです。

話し合いそのものについては、以前にWind Band Pressでチームビルディングのエキスパート、菅谷さんにお話を聴いたり、コラムを書いていただいた記事があるので、そちらも参考にしてもらえればと思います。

▼どうやって「良い組織」「良いチーム」を作るか?「チームビルディング」の考えを吹奏楽部・吹奏楽団に応用してみる話について伺いました
https://windbandpress.net/8999

▼菅谷宏一の「カリスマに頼らない楽団チームビルディングのススメ」(1)チームビルディングって?(1)
https://windbandpress.net/2972

▼菅谷宏一の「カリスマに頼らない楽団チームビルディングのススメ」(2)チームビルディングって?②
https://windbandpress.net/4963

▼「そもそも何のために話し合うのか?」~菅谷宏一の【楽団・部活動運営に役立つ】ミーティングデザイン講座 第1回
https://windbandpress.net/10562

▼「どこまで話し合うのか?」~菅谷宏一の【楽団・部活動運営に役立つ】ミーティングデザイン講座 第2回
https://windbandpress.net/10923

▼「どこから話し合うのか?」~菅谷宏一の【楽団・部活動運営に役立つ】ミーティングデザイン講座 第3回
https://windbandpress.net/11142

▼「“チェックイン” の時間を設ける」~菅谷宏一の【楽団・部活動運営に役立つ】ミーティングデザイン講座 第4回
https://windbandpress.net/11712

どうか感情的な対立ではなく、理性的な対立、建設的な話し合いをすることで、バンドがバラバラにならないように気をつけながら、音楽を楽しんでほしいなと思います。

 


その他「コラム」のコーナーには色々な方の面白くてためになる読み物が沢山ありますので、ぜひ読んでみてください。

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